
前回、『魔の山』の序文というかまえがきが
大げさな感じがするって書きましたけど
かつてのドイツ系の教養小説って
人間世界の普遍性に迫る……みたいな気概で
書かれていて
それは
いまのわたしたちの周りでよく聞かれる
「世界観」
の世界とは、まるで別物の世界を相手に
していますね。
当時は、いまのわたしたちが
(リアルの世界のことは知らないけど、
自分的にはこんな世界に浸ってる)
みたいな意味で使っているような世界観は
まったくあり得ないものだったでしょう。
もし19世紀後半から20世紀前半にかけての
ヨーロッパで
「リアルの世界のことは知らないけど」
なんて言おうものなら
それは人生そのものを放棄すること、人間辞めますに近い発言だったはずです。
でもいまのわたしたち、というか
いまのわたしは、世界情勢のリアル
なんてとても手が届かない……
あっちこっちで解説者はああでもないこうでもないとヤッてるけど、結局はっきりはつかめない。
と思いつつ、取り敢えず
(いいや、まず楽しもう。村上春樹の世界に浸って)
というので
『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』を手にとっています。
それくらいの落差があるわけですから
『魔の山』のまえがきが大げさに響くのは
当然であって
むしろ、いまのわたしたちの方が
リアルの世界を放棄し過ぎている
のかも知れません。
少なくとも今のニッポンで
ほとんどの人は
リアルの世界をトータルに理解する
あるいは理解しようとするなんて
とてもムリと
口には出さないけれど思っているのでは
ないかと、わたしは感じています。

